
以前から継続して行なっているゲーム音楽のアレンジについて、最近作ったものをまとめて振り返りたいと思います。
今回ご紹介するのは次の4曲になります。
・「怒闘」(「魔界塔士Sa・Ga」より)
・「戦闘シーン2」(「ファイナルファンタジーII」より)
・「魔界フィールド」(「レッドアリーマー 魔界村外伝」より)
・「ボス」(「レッドアリーマー 魔界村外伝」より)
●「怒闘」
まずは1曲めは、スクウェア(現スクエニ)のRPG「魔界塔士Sa・Ga」から「怒闘」という曲です。
原曲はこんな感じ
この曲はゲーム中のラスボスである「かみ(神)」と戦うときに流れる曲です。(RPGって最終的に神と戦いがちである)
この世界に飽き飽きしていた神が退屈しのぎに魔物を創り出し、さらにその魔物を倒すヒーローが現れる様子を見て楽しんでいた…という真相を知った主人公たちが怒り心頭に発して神に対決を挑むシチュエーションなのですが、曲のほうもそれに対応した作りになっています。
まずゲージMAXで激しさがスパークしたようなイントロ、ここで一気に曲に引き込まれます。
その後はハイテンポの8ビートとキャッチーなメロディ、そして高速で旋回するプロペラのような伴奏(これが特にカッコいい!)で最後まで息をつく暇を与えません。
シンプルでストレートなロック音楽のような曲調によって怒りや高揚感を全方位に押し出した、戦闘曲の王道と言えるでしょう。
そんな「怒闘」をアレンジしたものがこちらになります!
主旋律をトランペットとストリングスが交互に演奏し、16分刻みの細かなフレーズはオルガンが担当、ベースとドラムがロックなビートを刻むという構成にしています。
あと、原曲からの追加要素として、ディストーションの効いたエレキギターのバッキングを足しました。(ドライブ感UP!)
それぞれの楽器が活き活きとしたフレーズを弾くことで、結果的に総体としての音楽が浮かび上がるという、理想的なバンドアンサンブルが出来た気がします。
「怒闘」アレンジ評価
・原曲の怒りMAX度:★★★★★
・アレンジのアンサンブル感:★★★★☆
・原曲の怒りMAX度:★★★★★
・アレンジのアンサンブル感:★★★★☆
●「戦闘シーン2」
2曲めは、「ファイナルファンタジーII」から「戦闘シーン2」という曲です。
原曲はこんな感じ
この曲は作中で強力な敵キャラ(ラスボス含む)と戦うときに流れる曲になります。
先ほどの「怒闘」とは対照的に、曲の構成やメロディなど、全体的に複雑さを持っているのがこの曲の特徴です。
(イントロ→A1→A2→B→C→Dまで展開する構成。そしてA1、A2パートのメロディがスゴい。こんなメロディちょっと他で聞いたことがない)
あと、曲全体に漂う「絶望感」が何とも良い感じです。
人間の何倍もの大きさをした巨大な魔物との、ほとんど勝ち目のない戦い…そんな絶望感が曲に上手く表現されているように思います。
そんな「戦闘シーン2」をアレンジしたものがこちらになります!
ややオーケストラ寄りのバンドアレンジ、といった感じです。
イントロはこれから壮大な戦いが始まるのでワーっとした感じに、Aパートは前述のようにメロディが良いのでそれが美しく引き立つように、Bパートは少し締まった感じに…という風に、パート毎にメリハリを付けるように工夫したつもりです。
原曲のポイントである(と思っている)「絶望感」をバンドの音で醸し出すことができたかと思います。
「戦闘シーン2」アレンジ評価
・原曲の絶望感:★★★★★
・アレンジによる絶望感の再現:★★★★☆
・原曲の絶望感:★★★★★
・アレンジによる絶望感の再現:★★★★☆
●「魔界フィールド」
3曲めは、ゲームソフト「レッドアリーマー 魔界村外伝」の中から、「魔界フィールド」という曲になります。
原曲はこんな感じ
この曲はゲーム中で主人公がフィールド画面(魔界)を歩くときに流れる曲になります。
荒涼とした魔界の大地を一人で旅する主人公…そんな侘しさ、心細さが伝わってくる曲です。
この曲は音数が本当に少なくて、わずか2和音!(主旋律とベース音)しか使われていません。
ですがそれが却って侘しさを表現するのに効果を上げているようにも見えます。
そんな「魔界フィールド」をアレンジしたものがこちらになります!
前の2曲とは趣が異なり、ピアノとバイオリンによる静かなアレンジになっております。
シンプルで美しいメロディが何しろこの曲の要であり、それをバイオリンで弾かせることで美しさを引き立たせています。
アレンジとしては、ピアノがほとんどアルペジオを繰り返しているだけの単純なものなのですが、制作中になぜか静かな興奮を覚えました。
というのも、今までこのような方向性の曲を扱ったことがほとんどなく、今回試しに作ってみたら「あれ、意外と自分こういう曲も作れるのでは…?」と思える部分があったからです。
バリバリのロック調の曲だけでなく、今後はこういうしっとりとした曲もアレンジできたらな…と、そんな期待を抱かせてくれる制作となりました。
「魔界フィールド」アレンジ評価
・原曲の侘しさ:★★★★★
・しっとり系アレンジへの今後の期待:★★★★★
・原曲の侘しさ:★★★★★
・しっとり系アレンジへの今後の期待:★★★★★
●「ボス」
最後の4曲めもまた「レッドアリーマー 魔界村外伝」からの選曲で、「ボス」という曲です。(レッドアリーマーのBGMは何気に名曲揃い)
原曲はこんな感じ
その名の通り、各ステージに登場するボスキャラと戦うときに流れる曲になります。
魔界村シリーズの曲には一つ共通する特徴があって、それは「暗くて怖いけど洗練されていてカッコいい」というものです。
この「ボス」にもその法則が当てはまります。
例として、Aパートのメイン部分を少し見てみましょう。

「ボス」Aパート メイン部分の楽譜
この部分、ベースは低いドの音をひたすら繰り返していて、暗くて重たい感じを与えています。
一方で主旋律は同じ音形を繰り返しながらシステマチックに少しずつ下がっていく動きを取っています。
この時の副旋律がポイントで、8分音符4つから成るフレーズを繰り返しながら主旋律に連動してきれいに下降していて、これが優れた対旋律の役割を果たしています。
音として聴いた時もそうですが、楽譜に起こしてみても幾何学的で整然とした音符の配置になっていて、見ていて惚れ惚れします。
1ループ30秒にも満たない短い曲ですが、魔界村の曲が持つ「美学」が見事に凝縮された曲と言えるでしょう。
そんな「ボス」をアレンジしたものがこちらになります!
例によって、バリバリのロック調アレンジです。
バイオリンが主旋律を奏で、オルガンが副旋律、そしてドラム・ベース・ギターがビートを作る…という骨太な(?)編成にしています。
1曲めの「怒闘」と同じように各楽器がそれぞれに良い役割を演じていて、バンドのアンサンブルが上手くいったように思います。
制作中、「こういうロックの曲って本当にありそう!」とか勝手なことを思ったりしました。
原曲の持つ緊張感とかダークな感じとかがバンドの音で上手く引き出せた気がします。
「ボス」アレンジ評価
・原曲の洗練度:★★★★★
・アレンジのアンサンブル感:★★★★☆
・原曲の洗練度:★★★★★
・アレンジのアンサンブル感:★★★★☆
●終わりに
以上4曲、最近アレンジした曲を振り返ってみました。
以前よりも少しだけ、本当の(生演奏の)曲に近付けたものがものが作れるようになったかな〜と、この文を書きながら思いました。
また何曲か出来たらまとめて記事にしたいと思います。