
石川さゆりの名曲「津軽海峡・冬景色」をロマンシング サ・ガの戦闘曲風にアレンジしてみました。
●作るきっかけ
「ロマンシング サ・ガ」というゲームで流れる音楽が昔から好きです。
「ロマサガ」は25年以上前に発売されてから今なおリメイクが行なわれているスクエニの人気RPGの一つで、その音楽(とりわけ戦闘曲)のカッコよさには定評があります。
戦闘時に流れるBGMは、ロック系の激しいビートと耽美的な和音構成、そして華麗なメロディなどが相まって一つの独特な世界を形成しており、他のRPGの追随を許さないといった趣があります。
世の中には、この独自の音楽スタイルでもって既存の曲をアレンジする、「ロマサガ風アレンジ」という一ジャンルが(ごく一部の間で)確立されているほどです。
ロマサガファン+DTMが趣味、という2つの属性を併せ持つ私にとって、ロマサガ風アレンジというのは一つの夢であり、いつかはやってみたい憧れのような存在でした。
今回は、そんな私にとってのささやかな夢を実現すべくロマサガ風アレンジに取り組んでみた記録になります。
●「津軽海峡・冬景色」とロマサガ曲の共通点
今回アレンジの対象とするのは、石川さゆりの押しも押されぬ名曲、「津軽海峡・冬景色」です。
ふだん演歌に興味のない方でも紅白歌合戦などで一度は耳にしたことがあるであろう、昭和のマスターピースです。
なぜこの曲を選んだのかと言うと、「津軽海峡・冬景色」はロマサガの曲との共通項が少なからず存在するためです。
私が「津軽海峡・冬景色」を聴いていて思うポイントは以下になります。
「津軽海峡・冬景色」のポイント
・調はイ短調
・圧倒的な歌唱
・メロディは演歌・歌謡曲的(実際に演歌だ)
・符割りは主に3連符
・イントロ→A→B→Cと進む構成
・大切な人と別れて北の国へと帰る悲しみがテーマ
・調はイ短調
・圧倒的な歌唱
・メロディは演歌・歌謡曲的(実際に演歌だ)
・符割りは主に3連符
・イントロ→A→B→Cと進む構成
・大切な人と別れて北の国へと帰る悲しみがテーマ
対して、ロマサガの曲はどうでしょうか。
今回ロマサガ側で下敷きにするのは、ロマンシング サ・ガ2の「七英雄バトル」という曲になります。
原曲はこんな感じ
この曲のポイントは以下になります。
「七英雄バトル」のポイント
・調はイ短調
・メロディがちょっと歌謡曲的
・符割りは4分音符、8分音符が中心
・イントロ→A→B→Cと進む構成
・ロック系のビート
・激しく動き回るメロディアスなベースライン
・インストもの
・かつてはモンスターを倒して世界に平穏をもたらした「七英雄」が、時を経て自らがモンスターとなり人々を脅かす存在となってしまう悲しみがテーマ
・調はイ短調
・メロディがちょっと歌謡曲的
・符割りは4分音符、8分音符が中心
・イントロ→A→B→Cと進む構成
・ロック系のビート
・激しく動き回るメロディアスなベースライン
・インストもの
・かつてはモンスターを倒して世界に平穏をもたらした「七英雄」が、時を経て自らがモンスターとなり人々を脅かす存在となってしまう悲しみがテーマ
両者のポイントを図にまとめるとこのようになります。

ベン図による分かりやすいまとめ
いかがでしょう、驚くほど似通った部分が多いではありませんか!
この2曲をミックスして1つの曲にしない手はありません!
●制作
というわけで、実際に「津軽海峡・冬景色」をロマサガ風に編曲する作業を進めていきます。
この2曲にいかに似た部分があるとは言っても、かたや演歌でもう一方はゲーム音楽の戦闘曲で、まったく別ジャンルの曲ではあります。
両者の相違点については、うまく折り合いを付けながら作り変えていかねばなりません。
例えば先ほどの図で示した通り、メロディの符割りは「津軽海峡」は3連符がメインなのに対して「七英雄」は4分音符、8分音符が中心の構成になっています。
この点については、3連符のメロディを崩して「七英雄」的なメロディになるように直していきます。

例えばAメロはこんな感じに変えることにした
もう一つ「津軽海峡」と「七英雄」で大きな違いがあるのですが、それは「歌モノ」と「インスト」の差です。
今回改めて「津軽海峡・冬景色」を聴き直して思ったのは、この曲は歌手・石川さゆりの歌唱力を前面に押し出した曲であるということです。
ある時は艶やかに、またある時は力強く、変幻自在な歌声でもって聴く人の心を魅了する・・・(まるで七英雄の一人、ロックブーケのように!)
この歌唱が「津軽海峡」を時代を超えて歌い継がれる名曲たらしめているわけです。
この点は結構クリティカル(決定的)です。
ロマサガ風にアレンジする場合、曲を歌なしのインストものにしないといけないので、これによって原曲の魅力を減じてしまうリスクがどうしても出てきます。
この部分はよくよく注意すべき点で、今回は一つの対処法としてロマサガ側の強みを目立たせるようにしました。
ロマサガ側の強み・・・すなわち、ロック調のカッコいいドラム、そしてカッコいいベースラインです。
「七英雄」は特にベースラインが本当にスタイリッシュで一つのキモになっているので、アレンジにあたって原曲のフレーズを大いに参考にさせてもらいました。
●完成
そんなこんなで出来上がった「津軽海峡・冬景色」ロマサガ風アレンジがこちらになります!
同化の法(※)によって2つの曲が混ざり合ったこのアレンジをとくとお聴きください!
(※ロマサガ2の用語)
●イラストについて
ところで「動画に出てくるこの可愛い女の子のイラストは何?」と思われた方も多いと思います。

とてもいいイラストですよね
こちらは七英雄の紅一点、ロックブーケのイラストになりますが、新井 みあさんという(いわゆる)絵師の方に描いて頂いたものになります。(ありがとうございます!)
演歌の曲をロマサガ2の「七英雄バトル」風にアレンジするという曲の性質上、七英雄のキャラの一人が演歌歌手のように歌っている画があるといいな、と思ったので、そういう仕様を作ってお願いしてみたのでした。
その結果、仕上げて頂いたのがこちらのイラストで、初めて見た時にはちょっと本当に感激しました。
というわけで、この素晴らしいイラストも今回の動画の大きな見どころになります。
●終わりに
今回の制作で長年の夢だったロマサガ風アレンジが実現できて感無量なのですが、それとは別に思ったのが「演歌って良いな」ということです。
「津軽海峡・冬景色」を何度も聴くうちに演歌的な歌唱とかメロディの良さに気付かされて、何か新しい扉を開いたような気持ちになりました。
私は今までテレビで演歌の番組がやっていると別のチャンネルに切り替えてしまうような人間だったのですが、今回の制作後ではむしろ積極的にそういう番組を見るようになっていて、その変化に自分でも驚いています。
人はこうして年をとると演歌を好んで聴くようになっていくのだろうか・・・と妙な感慨を覚えた制作となりました。