
「金田一少年の事件簿」はどのストーリーも一定のパターンがあるように思う。
パターン化できるということは、プログラムのようにフローチャートで表現できるのではと考え、金田一のチャートを作ってみることにしました。
●「金田一」をチャート化したい
「金田一少年の事件簿」が好きである。
主人公の一(ハジメ)を中心として、助手役の美雪に剣持警部、明智警視など各キャラクターの造形が魅力的だし、次々と起こる奇怪な殺人事件は元ネタである横溝正史の推理小説のようでスリリングだし、解決編でハジメが謎をズバズバと解き明かしていく様子は読んでいて爽快感があって気持ちいい。
1992年の連載開始から28年経った今も断続的に連載が続いているなど、どこか普遍的な魅力を備えた作品なのだと思います。
ところで、この「金田一少年」にはどのストーリーにも共通したパターンがある。
第一の殺人事件が起こるとハジメは拳を握りしめながら「金田一耕助(ジッチャンと読む)の名にかけて!!」と叫ぶし、ハジメの推理が完了して解決編に向かう前には「謎はすべて解けた!!」と必ず言うお約束になっている。
これらのキメ台詞だけでなく、ストーリー全体の流れとしてもわりと似通った部分が多く見られるように思う。
一定のパターンがあるということは、それをプログラムで表現できるということである。
プログラムと言えばフローチャートなので、「金田一」のストーリーはフローチャートで表現できるのではないか?と思ったので早速チャートを作ってみることにしました。
●これが金田一フローチャートだ
さっきからちょっと何言ってるか分かんない、と思われた方もいると思うので、結果を先にお見せします。



つまりこういうことです
以下、順を追って説明していきます。
●導入部
まずはストーリー導入部のフローチャートについて。

大抵の場合、開始直後にハジメと美雪が何かのきっかけで旅行に行くことになる、というイベントが発生する。
臨時のアルバイトで雪山のリゾートに行くことになったとか、〇〇島ツアーのペアチケットを知人からもらったとか、何らかの理由があって2人は事件が起こる舞台に足を運ぶはめになるのだ。
続いて舞台に到着すると、何人もの人間が登場し、それぞれが思い思いのことを喋ったりする。
その中にアクの強い人物が必ず一人二人いて、不穏な言動をして周囲をザワつかせるのが金田一少年シリーズの「味」の一つであり、私が個人的に好きな部分である。
そんなこんなで場の緊張感が次第に高まっていき、とうとう第一の殺人事件が発生する。

ちなみに、本物のフローチャートにはこんな図形は使わないと思います
第一の殺人イベントが発生すると、かの名探偵、金田一耕助の孫であるハジメはこの状況に黙っていられず、こう叫ぶのである。
「謎はすべて解いてみせる。ジッチャンの名にかけて!!」

ここはC言語風にprintf関数(出力用の関数)で表現してみた。
せっかくの名台詞が、なんだか無機質な感じになってしまった
●推理編
続いて、推理編のフローチャートはこうなる。

大抵の場合、何らかの事情で外界との通信は絶たれているので、ハジメと美雪が推理をしていくことになる。
推理編のフローチャートにおいて一番のポイントは、ここの条件分岐ループである。

ようやくフローチャートらしくなってきた
この部分、ハジメが謎をすべて解かない限り、整数iがインクリメント(増加)して殺人事件が発生し続けるという恐ろしいループ構文になっているのだ。
最初の殺人だけで謎がすべて解ける場合はほとんどなく、大体はi=2,3,4…と増えていくことになる。
何だかんだで推理を進めていくうちにパズルのピースが嵌っていき、ここの条件分岐はようやくYESを通過することになる。
そして問題を解決した高揚感からか、ハジメは高らかにこう宣言するのだ。
「謎はすべて解けた!!」

「謎、一部解けなかったんですけど犯人は大体わかったので今回はこんなとこでいいっすかね?」とかそういうことはハジメは言わない。律儀な男なのだ
●解決編
解決編のフローチャートはこうなる。

解決編ではまず、生き残った登場人物が一堂に会するイベントが発生する。

「あ、アタシちょっと予定あるんでパスしまーす」とかそういうことを言う人はおらず、みんな律儀に集まってくれる
皆が何事かと思っている矢先にハジメはおもむろに口を開く。
「犯人はこの中にいる!」
驚く一同。
そしてハジメは登場人物の一人を指差し、こう叫ぶのである。
「犯人はアンタだ!!」
再び驚く一同。
フローチャート的には、ここで再び条件分岐のループが発生する。
結果的に合計N回の殺人事件が発生しているので、第1から第N番目の殺人のトリックを逐一説明する必要がある。(漫画的に)
そのため、犯人と名指しされた人物は最初から罪を認めたりはせず、アリバイがあることを主張しないといけないのだ。

普段はグータラなハジメがここぞとばかりに謎を解き明かしていく、主人公の面目躍如なループ
というわけで、ここのループはN回繰り返された後にようやく最後のイベントに辿り着く。
全てのトリックを見破られた犯人は罪を認め、事件に至った経緯を(時に涙を交えながら)語り始める。
少し悲しい余韻を残しながら、物語は終結する。(チャート終了)
●終わりに
今回フローチャートを作りながら思ったのは、「金田一」って水戸黄門に似てるなということだ。
長期にわたってシリーズが続いているのもそうだし、ストーリーの各所に「お約束」のシーンとかセリフが仕込まれている点も似ている。
(水戸黄門だと、印籠を出して「この紋所が目に入らぬか!!」と叫ぶシーンなど)
逆に言えば、水戸黄門もフローチャート化できるということなので今度考えてみようと思う。
ちなみに、最近の連載は37歳になったサラリーマンのハジメが事件を解決するストーリーになっている。この先「金田一中年の事件簿」「金田一老人の事件簿」とシリーズが続いていくのだろうか