
スーパーファミコンのゲーム、「半熟英雄」の曲をアレンジしてみました。
この曲はドラゴンクエストで有名なすぎやまこういち先生による作曲なのですが、曲のどこに魅力があるのかについても考察してみます。
●半熟英雄について
「半熟英雄」は、1992年にスーパーファミコンのソフトとしてリリースされました。
シリーズで何作か出ていますが、今回は第2作のことです
主人公率いる「半熟軍」と、敵役の「完熟軍」が互いにマップ上の城を取り合うという、シミュレーションRPGに属するゲームです。
このゲーム、シリアスな作風が多いスクウェアの作品の中ではけっこう異色なゲームで、随所にギャグが散りばめられているなど、コミカルな色調が強くなっています。
そんな「おふざけ」的な要素とは裏腹に、エッグモンスター同士の白熱する戦いなどゲーム性が高いのもこのゲームの特徴で、当時の私は飽きずに何度もプレイしました。
BGMの作曲は、「ドラゴンクエスト」の曲でお馴染みのすぎやまこういち先生が担当されています。
軽妙なオーケストラ調の曲が半熟英雄ののほほんとした世界観にぴったりと合っており、これもまたこのゲームの一つ大きな魅力になっています。
今回は、そんな半熟英雄の曲をアレンジしてみたいと思います。
●「剣劇」について
今回アレンジを行なってみるのは「剣劇」というタイトルの曲です。
原曲はこんな感じ
この曲はゲーム中の通常戦闘時に流れるBGMになります。
以下、曲の特徴について少し見ていきましょう。
@主旋律が木琴
まず、主旋律を木琴が軽快に奏でているのが印象的です。
戦闘曲のメロディを木琴が鳴らすというのはけっこう珍しく、私の知る限りそのような曲を他に聞いたことがありません。
戦いにおける緊張感や高揚感を盛り立てるため、トランペットやエレキギター、あるいはバイオリンの音で勇ましく歌い上げるのが普通の考え方です。
ですがそこは普通と違うのが半熟英雄、リアルな戦いではなくあくまでコミカルな「劇」の一部ということで、軽やかな木琴の音を使っているのだと思います。
このような、楽器の使い方ひとつにもゲーム性の違いが表れるのは面白いですね。
ちなみに、この曲の緊張感や高揚感はオーケストラヒット(ジャン!という音)の多用で実現されているので、その点にも抜かりはありません。
Aグッとくる転調
もう一つ、曲の途中で起こる特徴的な転調にも注目です。
この曲はイントロ以降、Aパート(2〜9小節)とBパート(10〜21小節)の2つに大きく分けることが出来ます。
調に関して、Aパートはヘ長調で始まりますが、続くBパートはへ短調に切り替わっています。
(いわゆる同主調の転調)

これはAパート出だしの主旋律

一方こちらはBパート出だしの主旋律。Aパートと同じ音形で、調が変わっていることに注目
この転調により、同じメロディでもBパートは少し物哀しい雰囲気に変わります。
コミカル一辺倒にはならず、ペーソスを適度に織り交ぜることで曲全体に深みを持たせているわけです。
ドラクエのBGMなど、すぎやま先生の曲には琴線に触れる転調がよく見られるのですが、この「剣劇」もそんなグッとくる転調がなされた曲の一つと言えます。
●アレンジした結果
そんなことを考えながらこの曲をアレンジした結果、こちらのものが出来上がりました。
アレンジ、というか本物のオーケストラで演奏したらこんな感じになるのでは、と思いながら作りました。
主旋律は原曲通りに木琴が演奏、伴奏を弦楽器が担当、そしてバックにパーカッションを配置、という編成にしています。
純粋なオーケストラ調の曲を扱ったのは今回が初めてなのですが、音の鳴らし方などが難しいな・・・と作っている時に思いました。
●終わりに
今回は、ゲーム「半熟英雄」の曲アレンジに取り組んでみました。
1ループ30秒ほどの短い曲にも関わらず、けっこう凝った作りになっていることに気付けたのが個人的に大きな収穫でした。
すぎやま先生の凄さを改めて実感した次第です。
こういったオケ風の曲がもう少し上手にアレンジできるようになると制作の幅が広がると思うので、今後も精進したいところですね。